対話も身体感覚もどちらも大切

心理療法やカウンセリングにもブームや流行、トレンドがあります。
カウンセリングはフロイトの精神分析から発展してきました。
精神分析は、無意識を意識化し言語的に語らせることで、無意識に抑圧された心理が解放されカタルシスを得てメンタルが安定するという技法です。
人は悩んでいる時、あるはメンタル不安定な時、そのメンタルの状況を内省したり言葉にしたりすることができません。それをセラピストが対話によって、クライエントの内省を促し、言葉にしていくのです。
別にセラピスト相手ではなく、家族でも友人でも、悩みを聴いてもらったら気持ちが安定したという経験がだれにもあるのではないでしょうか。
つまり、無意識の意識化=言語化ということになります。だから、メンタルの安定にとって言葉で語るということはとても大事な作業になります。
しかし、トラウマに関しては独自の治療法が必要でした。テロリズムや災害、事故等によって、アメリカや日本でトラウマを被る人が多くなってきたので、トラウマ治療が注目されてきました。
トラウマとは命に関わるような体験です。死ぬような思いをしたため、それが心の傷(トラウマ)となって残るのです。
トラウマも以前は、言語中心の対話で治療しようとしていた時期がありますが、うまくいかないどころか、トラウマを思い出させるため、かえってメンタルが悪化するということが起きるようになりました。
そのことから、2014年ベッセル・ヴァン・デア・コーク(Bessel van der Kolk)『身体はトラウマを記録する(The Body
Keeps the Score)』という著書を出版し、トラウマが体に記憶されるため、体へのアプローチが大切だということを主張しました。
ヴァン・デア・コークはトラウマに対してはヨガなどの有効性が説いていますが、その後、アメリカでも日本でも身体にアプローチするセラピーが開発されてきました。
目を左右に動かしたり、左右への音や身体刺激を与えるEMDR(眼球運動による脱感作と再処理)、東洋のツボをタッピングするTFT(思考場療法)、体へのアプローチを重視するソーマティックエクスペリエンス(SE)。日本で開発されたボディコネクトセラピー、ホログラフィトーク、USPTなど体へのアプローチを含む心理療法が発展してきています。
そのため、最近では悩みやトラウマを語らなくても体にアプローチして悩みやトラウマを改善する技法が1つのトレンドになっています。
(つづく)